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元気学

第1回 健康寿命を延ばす3原則

2016.09.09

~運動の前に、まず自分の身体を知りましょう~

平均寿命と健康寿命の間には約10年の開きが

2015年の日本人の平均寿命は男性81歳、女性87歳(※)で、男女ともに過去最高を更新しました。

一方で、最近は「健康寿命」が話題になっています。健康寿命とは、自分の思い通りに行動でき、人に助けられなくても日常生活を快適に送れる寿命のこと。元気で長生き、“ピンピンコロリ”はみんなの願いですが、平均寿命と健康寿命の間には男女とも約10年の差があり、その差を縮めることが大きな課題となっています。
※出典:厚生労働省「平成27年簡易生命表」

間違った身体の使い方をすると運動も逆効果に

健康寿命を延ばす3原則として「ロコモにならない」「メタボにならない」「認知症にならない」を提唱しています。では、ロコモやメタボの予防法は? 「運動」と答える人が多いと思いますが、運動を始める前に知っておきたいことがあります。ただ身体を動かせばいいというものではないのです。

便利なものがあふれて、意識・努力しなければ運動が不足する時代になりました。ロコモもメタボも身体を動かさない“不活発”な生活から起こる病態ですから、身体を動かす生活習慣は予防のために不可欠です。

ところが、運動をするときに間違った身体の使い方をすると、身体のどこかに無理な力がかかって、その部位、例えば腰やひざに痛みが出てしまいます。自分の体力や持久力に合わない過度な運動をしても、やはり運動器のトラブルにつながります。

運動器の症状というのは、実は若いスポーツマンでも高齢者でも根っこは同じで、ほとんどが無理な身体の使い方が原因です。逆にいえば、無理な使い方をしなければ、加齢や運動によって痛みが出ることはありません。

特に運動不足の中高年の人は、運動の前に準備として、今の自分の身体を知り、間違った身体の使い方をなおすトレーニングや、自分の体力、筋力に合った運動を選ぶことがとても大事です。自分に合った運動は「できるけど、ちょっときついな」ぐらいが目安。無理なく楽しく身体を動かす習慣づくりをしていきましょう。

健康寿命を延ばす3原則

ロコモにならない

メタボにならない

認知症にならない

ロコモやメタボの予防は美しい立ち姿から

足裏の正しい重心の位置

まず、足裏の重心の位置を知ることが大切です。それは、人差し指のつけ根と、かかとを結んだ中心上で、土踏まずの頂点あたりになります。

自分の身体を知るために、私は立ち姿のチェックをおすすめしています。人間の身体は自然と中心に重心がかかり、無理なく立てる構造になっていますが、不自然な立ち方、中心からずれる間違った身体の使い方が習慣になっている人がとても多いからです。

 

正しい重心の位置で立つ

イラストやチェックリストも参考にして、正しい重心の位置で立ってください。それで違和感を覚えるようなら、中心からずれる立ち方が習慣になっている可能性があります。自分の立ち姿を写真に撮ってみるのもよいでしょう。

両足を肩幅程度に開いてリラックスします。

ひざを曲げずに足の裏を床につけたまま、身体を前後に大きく揺らします。ひざをゆるめ、背骨を柔らかく動かしていくと、頭でも足の裏でも前後に1本の線ができているのを感じます。少しずつ揺れを小さくし、前後の線の中心を探します。

 足の裏を床につけたまま、身体を左右に大きく揺らし、そのあと徐々に揺れを小さくします。そして、左右均等に重力がかかる位置を探します。

 ②と③の動きを交互に行うと、頭の上に「+」の字がイメージできます。その中心を起点にして、頭で小さな円を描き、同じ方向にぐるぐる回します。少しずつその円を大きくしていきます。同じようにして、反対回りでも円を描きます。

足の裏全体を床につけたまま、身体の中心を意識しながら、天井から頭を引っ張られるイメージで背骨を伸ばします。背骨を縮める力に抵抗する動きをイメージします。

伸び縮みしない状態で力を抜いて立ちます。このようにすれば、重心の位置が正しい姿勢が完成します。

正しい重心の位置で立つ

今はどこにも痛みがないから大丈夫という人も、間違った身体の使い方をしていることは多く、そうするといずれどこかに痛みや故障が出てきます。メタボやロコモの予防は、まず美しい立ち姿から。バランスのとれた立ち姿は見た目にも美しいので、きっと気持ちも若返るのではないでしょうか。

あなたの立ち方は大丈夫?

立ち方のチェック

該当する項目を確認してください。

筆者プロフィール

渡會公治(わたらい こうじ)

帝京平成大学大学院健康科学研究科教授
一般社団法人美立健康協会代表理事
整形外科専門医・日本体育協会スポーツドクター
帝京大学医学部整形外科客員教授(スポーツ外来)


1947年、静岡生まれ。1975年東京大学医学部を卒業後、整形外科医としてスポーツ医学を研修。

ロサンゼルス・オリンピックのチームドクターなどの体験を活かし、1988年より東京大学大学院総合文化研究科生命環境科学系身体運動研究室准教授。その後、スポーツ障害の治療法・予防手段を確立し、一流アスリートの競技力向上に努めた。

近年は、運動器障害に苦しむ患者を救う「ロコモ体操」を考案し、東大駒場キャンパス、三宿病院、港区いきいきプラザなどで指導。各方面で「正しい、そして上手なからだの使い方」についての講演、寄稿、啓発活動も展開している。

著書に『美しく立つ―スポーツ医学が教える3つのA』(文光堂)、『新版 いますぐできるロコモ体操』(家の光協会)、『予約の取れないドクターシリーズ ロコトレ』(アスコム)など多数。

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